コロナ禍で就活が一変

64%の企業がオンライン選考

「オンライン面接」主流に/内定率滞るも新卒採用は堅調

大学生の就職活動(就活)が、新型コロナウイルスの影響で様変わりしている。合同企業説明会は相次ぎ中止・延期となり、多くの企業は採用方法の見直しを迫られた。慣れないオンラインでの選考が広がる中、学生も企業も手探りの対応に追われている。

コロナ禍が来春卒業予定の大学生の就活を直撃した。就職情報会社リクルートキャリアに聞くと、学生からは「コロナ禍で経営が悪化している企業がある。採用予定人数が減ったり、内定取り消しが起こらないか不安」といった心配の声が多く聞かれるという。

当初、今年の就職内定率は、合同企業説明会中止などの影響は受けたものの、前年を大幅に上回る勢いで推移していた。だが、全国的に外出自粛が呼び掛けられた4月以降は、対面での説明会や面接が激減し、企業はさらなる採用プロセスの見直しを迫られた。

5月1日時点の就職内定率は、45・7%と前年同月を5・7ポイント下回り、2017年以降初めての前年割れとなった。今月1日時点でも56・9%と、前年同月比で13・4ポイントのマイナスで、選考プロセスが滞った影響が出た(いずれもリクルートキャリア調べ)。

企業、学生双方とも身動きが取りづらい状況の打開策として、企業は学生とネットでつないだオンラインの面接や説明会を3月から本格化させた。採用コンサルティング企業のプレシャスパートナーズが大企業から中小企業を含む256社から回答を得た調査(5月21日から6月1日実施)では、64%の企業がオンライン選考を行っている【上図参照】。

■地方学生「交通費、宿泊費かけずに済む」

特に、最終面接を除く個別面接や面談をオンライン化させた企業は89%、オンラインでの説明会開催も80%を数えた【下図参照】。これまで、オンラインでの面談は海外の学生との間で例外的に使われる程度だったが、最終面接までの全ての選考をオンライン化する企業は、実施予定の12%を含め4割にも上るという。学生からは、「交通費や宿泊費がかからず、全国の企業へのエントリーがしやすくなった」との声も聞かれる。

今年の就活の特徴について、リクルートキャリア就職みらい研究所の増本全所長は、「旅行や宿泊業が影響を受けている一方、医療・介護・福祉、一部小売業は需要増の話も聞く。全体の感触として、新卒採用自体を抑える企業は多くないだろう」と指摘。その上で、人に会わなくても選考できる効率的なオンライン選考が、企業の採用活動を促している面を強調する。

昨年、採用予定数を充足した企業は45・7%(リクルートキャリア調べ)と半数を下回り、企業の人材難は依然として続いていた。増本所長は、1990年代後半から2000年代前半の就職氷河期に新卒採用を絞った結果、企業の成長を鈍らせた経験や近年の人手不足が採用枠の一定数維持につながっているとみている。

■中小企業の人材発掘、「スカウト型」も活用

コロナ禍で進んだオンライン就活は、今後も定着・拡大していく可能性がある。

画面越しでは学生の熱意や会社の雰囲気を見極めにくいという課題がある半面、22年春の新卒採用でも67%の企業がオンラインでの説明会を、56%が個別面接などを行う計画だ(プレシャスパートナーズ調べ)。

一方、中小企業はオンラインのノウハウに乏しい点で劣勢にあるのは間違いないが、一部には活用することでこれまで出会うことのなかった人材との接点を持てるケースも生まれている。増本所長は「実際、募集にオンラインを取り入れた中小企業では応募が増加しているところもある」と語る。

その好事例の一つが「スカウト型」採用だ。中小企業などが求める学生について、説明会やエントリーを経なくても企業側から勧誘できる「スカウト型」就活サービスの利用者が増えている。学生は思わぬ企業からのアプローチで選択肢を広げられることが利点だ。

人材サービス会社エン・ジャパンが展開する「iroots」は、大企業から中小企業を含む約300社が参加するスカウト型就活サイト。21年卒の学生登録数は5月下旬時点で約6万人に上る。同社によると、設立3年目のITベンチャー企業が今年、スカウト型で新卒採用を実現するなど、ITやサービス関連での活用も進んでいる。

公明党は、5月8日には、三浦信祐青年局長、安江伸夫学生局長、高瀬弘美同局顧問(いずれも参院議員)が学生らと共に、稲津久厚生労働副大臣(公明党)を訪ね、オンラインを活用した就活環境づくりのさらなる強化を訴えるなど、コロナ禍の雇用環境を守る観点から、学生の就活支援拡充に全力を挙げている。

公明党ニュース:

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