児童・生徒向け「モラル塾」
愛知県
女子児童がインターネットで知り合った男に誘拐されるなど、LINEなどのSNS(会員制交流サイト)をきっかけに子どもが事件に巻き込まれるケースが各地で後を絶たない。国の調査では10~17歳のインターネット利用率は9割を超えており、子どもにネット利用の危険性を伝えることが重要だ。愛知県は、保護者向けのネット利用講座に児童・生徒を対象に加え、昨年6月から「実践!みんなのネットモラル塾」として開催している。このほど小牧市立小木小学校で開かれ、推進した公明党の犬飼明佳県議のほか、安江伸夫参院議員、加藤晶子、稲垣衿子、星熊伸作の各市議が参加した。
SNS被害、長時間利用に注意
「SNSを通じて被害に遭う子どもは、1年に約1800人います」。講師の女性が話すと、参加した約50人の小学6年生は驚きの表情を浮かべた。講師の話は続く。「このうち9割は、フィルタリング(有害サイトの閲覧を制限する機能)をしていれば防げたかもしれないと言われています。怖い思いをしないよう、インターネットの安全な使い方を覚えましょう」。児童は真剣に耳を傾けていた。
この後、講師は「してはいけないこと」として(1)ネットで知り合った人と会うこと(2)スマートフォン(スマホ)の長時間利用による睡眠不足(3)ネットいじめ(4)悪ふざけの投稿――を挙げた。参加した女児の一人は「動画で教えてくれて分かりやすかった。帰ったら家族にも伝えて、みんなで気を付けたい」と話していた。
小牧市教育委員会はこの講座の利用に積極的で、多くの小学校で開いている。この日は土曜日で授業参観があり、学校から参加を呼び掛けられた6年生と保護者が講座に参加した。
学年主任の男性教師は「自分のスマホだけでなく親のスマホを借りて遊ぶ児童も少なくない。昨年、大阪で起きた誘拐事件は他人事ではないと感じており、こうした講座はありがたい」と語った。
講師を務めた女性(左から3人目)と懇談する(右から)犬飼県議、安江氏と市議ら
県はインターネットを通じたトラブルに子どもが巻き込まれないよう、2018年度に保護者向けのネットモラル塾を開始。放送通信サービス会社に委託し、200回程度開いた。参加した保護者からは「子どもとルールを話し合いたい」「SNSの危険性を初めて知った」などの意見があった。
これを踏まえて19年度からは、子ども自身にネット犯罪防止への意識を高めてもらおうと、児童・生徒向けの講座を始めた。学校や市町村などから要望を受けて開き、3月までに約200回を予定している。
犬飼県議は18年9月の本会議で、保護者から「子どもがネット社会の危険性に対する知識が浅く心配」と相談があったことを紹介し、子どもがインターネットの安全利用について学べる取り組みが必要だと主張した。
昨年3月の県議会総務県民委員会では、保護者向けのネットモラル塾について「子ども自身への啓発が必要」と強調。県側は「ネットモラル塾の対象を児童・生徒にも拡大する」と答えていた。
小木小学校の講座に参加した安江氏は「家族でネットモラルを学ぶ重要性を痛感した。国政に生かしたい」と語った。