園庭で自然に慣れ親しむ
命の大切さ学び、優しい心に
虫や魚、草、木など多様な生き物が生息する空間「ビオトープ」を学校や保育園などの敷地内に整備し、環境教育に活用する取り組みが各地で行われている。2月には「全国学校・園庭ビオトープコンクール2023」(日本生態系協会主催)の発表大会が開催され、上位5賞が紹介された。その一つである環境大臣賞を受賞した登美丘西こども園(堺市)の取り組みを取材した。
■堺市の登美丘西こども園
「ヤゴはどこにいるかな?」「貝を見つけたよ!」―。外遊びの時間、園児は園庭に造成された小川や池をのぞき込み、そこに生息する生き物を探すのに夢中だった。
閑静な住宅街にある登美丘西こども園では2016年度、保護者や近隣住民の協力を得ながら、地域の動植物も取り入れて園庭面積の3分の2をビオトープ化。20年度には園所有の敷地に「田んぼビオトープ」も造成し、園児が稲作に取り組んでいる。
「毎日、園庭に出れば動植物に出会え、雨の日でも観察学習ができる」と話すのは同園の大仲美智子顧問。「普通の外遊びのようで地味に見えるけれど、園庭で身近な生き物に触れる中で、自然に対する向き合い方が変わってくる」と語る。
園児たちは四季に応じて変化する園庭ビオトープを通じて自然に慣れ親しみ、動植物の成長過程や生息環境の保全などの大切さを学ぶ。
大仲顧問は「例えば、バッタを捕まえても、園児はバッタに適した環境を考えて元の場所に戻している。命の大切さを学ぶ中で、友達にも優しく接するといった気持ちが育まれている」と指摘。「遊具が無くても、水や草などの自然があれば仲良く遊べるのが、うちの園児の特徴だ」と話していた。
■「総合学習」導入で普及/協会主催のコンクールも定着
学校・園庭ビオトープには、同園のように池などの水辺や草地を造成したり、もともとあった雑木林を生かしたりするなど、さまざまな形態がある。小中学校・高校の授業に「総合的な学習の時間」が導入された00年代以降、全国的に拡大し、保育や幼児教育の現場にも広がっている。
1999年から始まった全国学校・園庭ビオトープコンクール(隔年開催)は今回で13回目となり、これまでに受賞した学校・園は延べ1000を超えている。2月の同コンクール発表大会で安江伸夫文部科学大臣政務官(公明党)は、保護者や地域住民らとの取り組みも多いことを踏まえ「学校と家庭や地域を結びつける懸け橋としても意義を持つ」と述べた。
■生物多様性、国家戦略に記載
気候変動や生物多様性の損失といった環境問題が切迫する中、政府は昨年3月に「生物多様性国家戦略2023―2030」を閣議決定。この中で、行動目標の一つに掲げられた「環境教育の推進」には「学校・園庭ビオトープを通じた学校教育などを推進する」と明記された。
同戦略は、2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された、30年までに自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」(自然再興)という新たな世界目標に対応し、五つの基本戦略を設定。その一つに「一人一人の行動変容」が位置付けられ、行動目標として学校などでの生物多様性に関する「環境教育の推進」が掲げられている。
一方、11日の参院環境委員会で公明党の谷合正明氏は、教育現場での取り組み促進へ、環境省が改定を進める「環境教育等の推進に関する基本的な方針」に、学校・園庭ビオトープを位置付けるよう提案。同省は「学校・園庭ビオトープに関し、こうした場を活用した自然体験活動などの促進についても(基本方針に)盛り込みたい」と答えた。
■持続可能な社会へ国・地方で後押し/党環境部会長 鰐淵洋子衆院議員
環境教育は、持続可能な社会の実現に向けて重要性が増している。そうした中、公明党は学校・園庭ビオトープについて、子どもや住民が地域の生態系を考える上で重要な取り組みだとして、国政選挙などに合わせて作成している「こどもマニフェスト」に記載するなど、一貫して推進してきた。
また、生物多様性の保全や「ネイチャーポジティブ」対策の強化に向けては、各地方議会で国に対する意見書の提出を推進しており、その中で学校・園庭ビオトープの普及促進も訴えている。
公明党は今後も、環境教育をさらに推進するため、国と地方で連携して各地の取り組みを後押ししていく。
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