がん教育について

 2人に1人が一生のうちに罹患し、国内における死因第1位であるがん。その正しい知識を学校で子どもたちに身に付けてもらう「がん教育」の充実へ、文部科学省は医師やがん経験者ら外部講師の活用を促す通知(1月19日付)を都道府県・政令指定都市教育委員会などに発出した。外部講師活用の現状について解説する。

 学校におけるがん教育には、子どもたちに「がんを正しく理解してもらう」「健康と命の大切さについて主体的に考えてもらう」という大きく二つの目的がある。

 中学校と高校の新たな学習指導要領に盛り込まれたことで、中学では2021年度から、高校では22年度から全面実施されるようになった。小学校でも、児童の発達段階や学校の実情に応じて展開。▽がんとは、どのような病気か▽検診で早期発見する重要性▽患者への偏見軽減や理解増進――などを学んでいる。

■小中高の11%

 内容の充実には専門知識を持つ医師や、実体験に基づいた話ができるがん患者・経験者ら外部講師の活用が重要になるが、文科省が公表した調査結果によると、22年度に外部講師を活用してがん教育を実施した学校は、全国で小学校が9・5%、中学校が14・7%、高校が11・7%で、全体では計11・4%にとどまった。昨年度の計8・4%から微増しているものの、思うように進んでいない。

 外部講師を活用しなかった理由としては「教師が指導したため」(63・2%)が最多で、「指導時間が確保できなかった」(25・3%)、「適当な講師がいなかった」(8・0%)が続く。

■派遣依頼の窓口設置など要請

 こうした点を踏まえ文科省が出した通知では、都道府県・政令指定都市教育委員会に対して、衛生主管部局と連携してがん教育の推進に関する協議会を開催し、外部講師の活用を推進するように要請。具体的な検討事項として、外部講師名簿の作成や学校側が派遣を依頼できる窓口の設置、研修の実施などを挙げた。

 さらに、文科省は、日本医師会に対しても外部講師の活用に協力を求める通知を発出。厚生労働省も、各衛生主管部局に同様の通知を出した。

 今後、これらの通知を各自治体でどう受け止めて、取り組みを進めていくかが重要になる。公明党文科部会の浮島智子部会長(衆院議員)は「全国の地方議員と連携して、各地の取り組みをさらに後押ししていきたい」と意欲を語る。

■地方議会での議論に期待/安江伸夫文科政務官(公明党)

 がん教育に際して、専門家である医師や、がんと向き合う当事者を外部講師として活用することは、正しい知識や共感的理解を深める上で大変に有意義だ。裾野を広げていきたいとの問題意識が、今回の通知の発出につながった。

 外部講師の活用を促進するためには、教育委員会や衛生主管部局、医師会、がん患者団体など、さまざまな関係者の協力が不可欠となる。各地方議会でも活発に議論し、実施・充実の機運を高めていただきたい。

 文科省としても「がん教育シンポジウム」の開催などを通じて、外部講師活用の好事例の横展開に努めてきた。講師派遣にかかる経費などを支援する事業も実施しており、2024年度予算案には23年度比で1200万円増となる4400万円を計上した。成立後はぜひ、各自治体で活用を進めてもらいたい。

 今後も、各地の取り組みを支援するとともに、外部講師の指導力アップに資する研修会の開催などを通じて、がん教育の充実を進めていく。

■公明が強力に推進/国の基本計画に明記

 公明党は、がん教育の重要性にいち早く着目し、国会質問などを通じて第2期がん対策推進基本計画(12~16年度)に「がんの教育・普及啓発」を初めて盛り込ませるなど、強力に推進。

 外部講師の活用に関しても繰り返し訴えた結果、第3期同計画(17~22年度)では「国は地域の実情に応じて、外部講師の活用体制を整備し、がん教育の充実に努める」と明記された。23年度から始まった第4期同計画においても、「医師、がん患者・経験者等の外部講師を活用しながら、がん教育が実施されるよう、必要な支援を行う」と記載されている。

 一方、地方議会では、各地の実情に応じた形でがん教育の開催・充実をリードしている。

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