児童養護施設の生徒に受験料、1人20万円支援
JASSO、申請は来年2月末まで
児童養護施設の生徒に大学受験の機会を――。日本学生支援機構(JASSO)は今年度から、経済的な事情で大学などへの受験を諦めることがないよう、児童養護施設などで生活する受験生1人当たり年20万円を支援する制度を創設した。5月から申請を受け付けており、審査終了分から支援を開始する。同機構は受験が本格化する来年2月末まで申請を受け付ける。同制度を巡っては、公明党が支援策の検討を求めていた。
対象は、2024年春に高校を卒業予定、または卒業後2年以内の生徒。児童養護施設やファミリーホーム、里親などの元で生活し、申請時点で就職しておらず進学を希望していることが条件となる。年20万円の支援金は受験料や交通費、宿泊費などに充てられる。最大で年2000人程度を支援。同機構への寄付金を活用した事業で予算規模は年5億円を見込む。
背景には、児童養護施設出身者の大学などへの進学率の低さがある。20年に文部科学、厚生労働両省が行った調査では、全世帯の現役進学率が7割台なのに対し、児童養護施設の生徒は3割台にとどまっている。
日本政策金融公庫の調査では、受験料のほか、願書代や交通費、宿泊費などで国公立大学で27.7万円、私立大学文系で31.3万円、私立大学理系で32.2万円の費用負担が生じると試算。加えて厚労省が21年までに行った調査では、児童養護施設の退所後の不安・心配について「生活費や学費」が47.9%と最も高かったことから、経済的負担で進学を断念することがないよう支援することを決定した。
■浮島氏、支援の恒久化めざす
大学などへの進学後に関しては、公明党が推進した給付型奨学金など支援制度が充実している。一方で進学前に活用できる支援策が少ないことから、公明党の浮島智子衆院議員と安江伸夫参院議員らが国会質疑などで対応を検討する必要性を強調していた。制度の創設を受け浮島氏は「子どもたちを同じスタートラインに立たせて、挑戦できる環境の整備が重要だ。児童養護施設の生徒が安心して受験に挑戦できるよう支援の恒久化をめざしたい」と語った。