参議院憲法審査会で「緊急集会」について

参議院憲法審査会

参議院憲法審査会が開催。
テーマは「緊急集会」について。
衆議院が解散や任期満了により不在となり、災害等の事由により選挙が行えないような場合、国会機能をどのように維持すべきか。
大変重要な議論です。多くの皆さまに関心をお寄せいただければ幸いです。

動画🔽
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7433

私の発言は、コチラからもご覧いただけます

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議事録

第211回国会 参議院 憲法審査会 第4号 令和5年5月10日

安江伸夫君 緊急集会の限界はどこにあるのか、議員の任期延長等の要否とその内容を決するためにもこの点を明らかにすべきと述べてまいりました。
 これまでも繰り返し指摘をされておりますが、憲法の規定を通覧するだけでも、緊急集会に対して国会と完全に同等の権限を付与することが困難であることについては異論がないところかと思います。すなわち、緊急集会は二院制の例外として位置付けられ、緊急の必要があるときに内閣の求めによって初めて開かれ、開会期間も文理上は最長七十日を予定し、そして緊急集会においてとられた措置は臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合にはその効力を失うものと規定をされております。以上の規定を踏まえましても、緊急集会の機能は限定的であり、かつ暫定的であると解すべきです。
 特に、緊急集会は七十日を超えて長期間開会されることが明示的には予定されていないことは大きな憲法的課題と考えます。七十日を超えてから緊急集会での対応が全くできないということを憲法が想定していないと考えたとしても、少なくともこれを超えてからは緊急集会の憲法上の許容性は経時的に後退すると考えざるを得ません。その意味するところは、緊急集会の民主的正統性の後退と言えます。したがって、この点については、まさに現行憲法の想定していない限界事例と捉えて対応を検討する余地があると考えます。
 もっとも、緊急集会の具体的な権能の範囲が必ずしも明らかとは言えない状況は整理されるべきものと考えます。参議院法制局作成に係る資料におきましても、この点については解釈上議論があると指摘されております。緊急集会の限界を補う一つの方途として議員の任期延長等を論じ進めるのであれば、この解釈上議論があるとされている点について参議院として一定の見解を示すことは不可欠と考えます。
 また、前回も、以前も指摘させていただきましたが、緊急集会において議員が発議できる案件の範囲についても同様と考えます。今後、本審査会に有識者を招くなどして、この緊急集会の権能の範囲や議員が発議できる案件の範囲についても議論を深め、共通認識を得られればと考えております。
 さて、議員の任期延長等について緊急集会の限界を画した上での本格的な論議を当然望むところでありますけれども、衆議院等が先行していることを踏まえ、確認ないし留意すべき点を指摘しておきたいというふうに思います。
 まず、衆議院の優越の有無についてです。
 衆議院の憲法審査会等では、議員の任期延長等の要件として国会の承認が挙げられております。しかし、特に衆議院議員の任期延長等を承認する場合に、衆議院の優越は認められるのでしょうか。一般的に、その根拠として、衆議院は参議院に比して任期が短く、解散もあり、選挙を通じて国民の民意を反映しやすいという点にその優越の根拠が認められているとすれば、任期を終えれば議員としての身分を失うべき状況にあるわけですから、本来的には民主的正統性が後退ないし喪失していると言えます。したがって、任期延長等の判断において衆議院の優越の根拠は失われていると言えないでしょうか。これは、任期の更新に当たっても同様です。そうであれば、任期延長等の国会の承認には衆議院の優越は認められないと考えます。自明の理かもしれませんけれども、この点は重要な点として指摘しておきたいと思います。また、衆議院議員の任期延長等の判断において、選挙を通じた民主的正統性がより保持されている参議院が先議すべき事柄であることは言うまでもありません。
 次に、在任中の任期延長等と解散又は任期満了に伴って身分を失っている際の延長と、すなわち全議員が身分復活を同等の手続で論じることについては、その妥当性について検討の余地があると考えます。なぜなら、前者はその時点においては民主的正統性が担保されている状況での判断にはなりますが、後者はそれが喪失された状態での判断であり、両者は質的に異なる状況での判断と言えるからです。そこで、例えば後者の場合については、まずは民主的正統性が担保されている緊急集会において衆議院議員の身分の復活を決し、その上で任期延長等について国会の議決を行うとすることが国民主権の原理にかなうのではないかというふうに考えております。
 最後に、任期延長等を経た議員で構成される院の措置の効力についてです。
 その院の措置は、本来の選挙を経ていない者で構成された院の判断という点において、民主的正統性が少なくとも後退した状態での判断とも評価できます。そうであれば、それらの措置を補完するための作用として、緊急集会の措置が事後的に衆議院議員の、衆議院の同意を要するのと同じように、将来に向けその効力を有するためには、選挙を経た議員で構成をし直した院による同意が必要ではないでしょうか。問題提起とさせていただきます。
 いずれにいたしましても、憲法が想定をする民主的正統性が保持された参議院の意義を明確にしていくことが重要と考えていることを指摘させていただきまして、私の意見表明とさせていただきます。

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