畜産地帯の脱炭素化へ
愛知・半田市
愛知県半田市は現在、牛のふん尿を発電に活用して臭気を低減させる試みを民間企業と共同で実施している。事業の中心を担う「株式会社ビオクラシックス半田」(水野貴之代表取締役)が昨年10月、ふん尿などからメタンガスを取り出して発電する施設の運転を開始。今年秋ごろからの発電を予定している。臭気を低減する装置も設け、一連の事業計画は国の「バイオマス産業都市構想」に認定されており、このほど公明党の安江伸夫参院議員と党市議団が視察した。
■安江氏ら視察、バイオマス都市構想の一環
国の「バイオマス産業都市構想」は、食品廃棄物などの有機資源を活用して産業の振興に取り組む自治体に交付金を出すもの。同市の構想は①バイオガス発電②発電施設の廃熱・ガスを活用した植物農場の運営③発電施設から出る液肥の活用④畜産ふん尿の臭気低減――が柱だ。
「ビオクラシックス半田」の発電は、メタンガスを燃やしてタービンを回す仕組み。ふん尿や食品廃棄物などのバイオマス資源を発酵させてメタンガスを生成し、「ガスホルダ」と呼ばれる球状の建物に集めて発電機に送る。1日10トンのふん尿を処理し、施設内の気圧は外より低く設定。ふん尿の臭いが地域に漏れるのを防ぐ。活性炭による臭気吸着や薬液を用いた脱臭も実施している。
■約1500世帯分を賄う
施設の発電能力は最大800キロワットで、同社によると、約1500世帯分を賄える量を発電できるという。電力事業者へ売電するほか、発電施設の横にミニトマトを育てるビニールハウスの農場をつくり、発電する際に出る熱や二酸化炭素(CO2)をハウス内で活用し、年間を通して収穫できるようにする計画だ。災害発生時に地域の非常用電源とすることも検討している。
半田市は、古くから畜産が盛んな地域。合計約1万頭の牛を育てており、飼養農家1戸当たりの頭数が県内1位で、市内の農業生産額の85%を畜産が占める。
しかし、住宅地に近い場所にも畜舎があるため、ふん尿の臭気に不快感を覚える住民もいる。7年ほど前、市内に引っ越してきた奥原抄織さんは「住んで間もない頃は、臭いに慣れなくて。今も夏の暑い時期、窓を閉めることがある」と話す。
市は、臭気低減も重視し、ふん尿を固形分と水分に分ける固液分離機械の効果についても調査中。水分が減れば、天日干しで堆肥化・処分する時間を短縮でき、臭気の低減が期待できる。分離した水分は、発電施設に集めて使用できる。
公明党の山本半治市議は2013年3月定例会で、バイオマスエネルギーを活用する他県の取り組みを紹介し「臭気対策にもつながる。国の補助制度を活用してはどうか」と提案。14年3月議会でも「家畜のふん尿を活用する循環型施設ができれば、環境に優しい街になる」と、バイオマス資源を活用した施策の実現を繰り返し訴えてきた。
視察を終えた安江氏は「脱炭素社会実現に向けて先進的な取り組みだ。今後、より効果的な支援ができれば」と語った。
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