マーク各地に広がる
公明、一人の母の不安聴き尽力
産後の母親の中には「赤ちゃんが入院中」「すぐ仕事復帰した」などの事情で、外出先で自ら母乳を搾る「搾乳」が必要な人がいる。ただ、赤ちゃんと一緒でないため、授乳室などの利用を周囲から不審がられ、ためらう場合も珍しくない。こうした母親らの訴えを受け止めた公明党の推進で、気兼ねなく授乳室でも搾乳できるようにする取り組みが各地で広がり、国も動き始めた。
■神奈川県で作成
神奈川県庁舎(横浜市)の授乳室。入り口には、「搾乳できます」の文言が記されたマークが掲示されている。搾乳での利用可能を示すシンボルマークで、県が2024年10月末に作成した。県はマーク、または搾乳が可能なことを示す掲示の協力を県内自治体や商業施設に呼び掛けており、現在、378施設が対応している。県担当者は「マークは趣旨に沿った目的であれば、県外の自治体・企業も含めて、申請不要で利用できる」と説明する。
このマークが誕生したきっかけは、2500グラム未満で生まれた低出生体重児の母親らでつくるNPO法人「pena」の理事長・坂上彩さんの訴えだった。
■人の目が気になって
坂上さんは18年、妊娠24週目で370グラムの長女を出産。長女はNICU(新生児集中治療室)も含め入院が4カ月に及び、先に退院した坂上さんは毎日、搾乳した母乳を病院へ届けた。しかし、ある日、電車が遅延し、やむなく搾乳のため、降車駅最寄りの商業施設の授乳室を利用することに。一人で出入りする際、“人の目”が気になり、不安になったという。
同じようにpenaのメンバーには、「赤ちゃんがいないのに、なぜ授乳室に入るのか」と話している声が耳に入り、傷付いた人もいる。「赤ちゃん連れのみで利用ください」と掲示する授乳室もあり、利用への“敷居”は高い。
penaは、公明党神奈川県議団と手を携え、低出生体重児の成長を記録できる「リトルベビーハンドブック」を県が23年8月に作成するのに尽力。以降、党県議団の推進で県と定期的に意見交換できるようになり、24年夏、坂上さんは、こうした授乳室の悩みを県に伝えた。党県議団も坂上さんと連携して同9月議会で取り上げた結果、マークが実現した。
坂上さんは「マークができ、ママたちの心の負担が和らいだ。公明党のおかげで、私たちの声が政治に届いた」と感謝する。
■岡山、愛知も取り組み
他の自治体でも、低出生体重児の母親から寄せられた同様の悩みに、公明議員が奮闘している。
例えば、岡山県では、24年6月議会で公明党の県議が訴え、県庁舎の授乳室に「搾乳でもご利用いただけます」と書かれた掲示が実現した。愛知県でも同10月の議会で公明党の県議の提案が実り、同様の掲示物が県施設34カ所に張り出されている。
■外出や職場復帰を後押し
産後、授乳をしている母親の体内で母乳は作られ続ける。2、3時間ごとに搾乳をしないと、分泌が悪くなったり、乳腺炎などになる恐れが高くなる。安心して搾乳できる環境づくりは、産後の母親の外出や職場復帰の後押しにもなると期待される。
労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は「搾乳が難しいことを理由に、外出を控えたり、仕事を辞める女性は、一定数いると思われる。授乳室でも搾乳が可能なことを示す掲示が公共機関や商業施設などで広がれば、そうした悩みを抱える女性も利用しやすくなる。また、女性の健康や育児支援の観点から、企業が女性従業員の搾乳の問題を考えるきっかけになる。良い取り組みだ」と語る。
■佐々木氏、安江氏らが提言/国、バリアフリーの指針位置付け検討
“搾乳可”表示普及への地方の動きを受け、公明党の提案で、国も対応へ動き出した。
24年11月、神奈川県の取り組みを県議から聞いた党女性局長の佐々木さやか参院議員(参院選予定候補=神奈川選挙区)は、党女性委員長の竹谷とし子代表代行や党国土交通部会長の安江のぶお参院議員(同=愛知選挙区)らと連携。佐々木、安江の両氏らは翌12月、中野洋昌・国交相(公明党)に対し、公共交通機関や公共施設などのバリアフリー整備のガイドライン(指針)に、授乳室での搾乳が可能であることや、周知・啓発のマークを盛り込むよう提言した。
同16日には佐々木氏が国会質問で改めて訴え、中野国交相から「ガイドラインの記載を充実させ、位置付ける方向でしっかり検討したい」との答弁を引き出している。国交省の検討が進む中、佐々木氏は「安心して搾乳できる環境づくりを党のネットワークを挙げ進める」と語る。